fire blizzard
-fire 3-
あのあと辺りをパーッと見たが、あいつはどこにもいなかった。何しに来てたんだ、あいつ。何を考えてたらあんな目になるんだよ。考えたところであいつのことなんか分かるわけはないが、気になるもんはなる。
だからと言ってあっちゃこっちゃ探し回るってのも変だし、会って何か話したいかっていうと、むしろ何言っていいか分かんねぇ。大体、元々敵みたいなもんなんだし気にする方がどうかしてるっての!俺は探すのをやめることにした。あぁでもまたモヤモヤ。クソッ一体何なんだ。
(もう知るか、そんな暇あったら特訓して、グランからジェネシス奪うだけだ!!)
俺は個人練することに決めた。そうだ、ジェネシスさえあればいい。ジェネシスの称号さえ手に入れば、こんなわけ分かんねぇもんに煩わされることもなくなるだろう。
「アトミックフレア!!」
俺の自慢の必殺技は、それを後押ししてくれるようにゴールに突き刺さった。
威力も精度もいい感じに上がってきてる。でももっともっと上げてやる。俺はもう一発打とうと思ってボールを蹴り上げた。まだまだこんなもんじゃねぇだろ。何せプロミネンスがジェネシスになったら俺が最強のキャプテンなんだぜ!
―――そう、思った瞬間。
「……ッ!!」
ザラリとした違和感が襲ってきたのを、気のせいにすることはできなかった。
目の前にボールが落ちて、情けなく何回か跳ねて止まる。
その間も、体が硬直して全然動かなかった。
(なんだ…これ)
自分でも血の気が引いてるのが分かる。貧血とか大袈裟な話じゃねぇけど(そういうのはヒートの専売特許だろ)、何だかゾクッとするような。今までもずっとジェネシス目指してやってきたけど、こんな風にはなったことない。
(何だよ…)
じゃあ何なんだ。―――少し考えれば、行き着きたくない答えに辿り着く。
(やめろ…やめろやめろ…)
宇宙最強のチーム、ザ・ジェネシス。そのキャプテンは、最強のキャプテン。
(やめろ、違う!!)
俺は、その器じゃない。
そこはグランの場所。
俺は無意識に、そう思ってたんだ。
「……」
俺のプロミネンスはマスターランク、俺の自慢のチームだ。けど、客観的に比べれば、ガイアのスペックにはどっかで敵わない。一番になるには何か足りないみたいな。ガイア、って名前は一応ついちゃいるけど、もう最初っからあいつらがジェネシスってのは決まってて、俺らは――俺とあいつは、ただ利用されただけなんじゃないか。
そんな考えが、考えたくもねぇのにどんどん湧き出てくる。
「…んなバカなことがあってたまるかぁっ!!」
気付いたら、また体が勝手に動くようになってた。本能的に、さっき転がったボールを力の限りで蹴り上げる。
「アトミックフレア!!」
さっきよりも威力がぐっと上がってたのが自分でも分かった。
いける。まだまだ俺だって!
(グランになんか、絶っ対負けねぇっ!!)
両手で拳握ってそう誓う。今に見てろよ、俺が一番になってやる。当て馬なんかにしたこと、後悔させてやんだからな!!
ふっと、何の脈絡もなく、さっき見たあいつの青い目が一瞬よぎった。
「……」
(あいつも…似たようなこと考えてたのかもな)
何となくだけどそう思った。
その時はまたモヤモヤし出すのがめんどくさくて、それ以上考えるのはやめたけど、
あれは、予感だったのかもしれない。
「バーン様!!」
その二日後だった。
「あのお方が…ジェネシスにガイアを正式に選ばれたと…!!」
サトスが血相変えて俺のところに飛び込んで来たのは。
「なっ…」
俺は、いや、一緒にいたプロミネンスの奴ら全員が、絶句した。
なんでだよ。
まだ俺たち何もしてねぇじゃん。
ガイアはもちろん、雷門にだって。
何なんだよそれ。
当て馬どころか、当たるチャンスさえもらえねぇってのか―――?!
「――――っざっけんじゃねぇぞ!!」
「あっ、バーン様っ!」
その瞬間目の前が真っ赤になるような怒りに駆られて駆け出して、
気付いたら、俺は、
あいつの前にいた。
「…バーン」
あいつが俺の名前を言った。
だから俺も。
「聞いたか、ガゼル」
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