fire blizzard
-blizzard 1-
エイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダスト。絶対零度の闇で宇宙を支配するために作り上げた、冷静かつ正確な、私のチームだ。
円堂守。グランを惹き付けたというからどんな奴か気になった。そうしているうちにイプシロンも倒した。面白い、練習相手にしてやってもいいな。最初はそんな気紛れから呼びつけた。それだけのつもりだったのに、彼らは先に点を取って私を本気にさせた。
「このユニホームを着れば気持ちは一つ!」
…随分甘いことを言うじゃないか、面白い。
「叩き潰してやるよ!」
そして思い知れ、本当の統一というものがいかに冷たいかを!
私の合図のもと、チームはフローズンスティールからの一連の速攻でボールを奪った。
「凍てつくがいい!」
「来いっ!」
いいだろう、後悔するなよ。
「ノーザンインパクト!」
この必殺技は、誰にも止めさせない。もちろん円堂守も、例外ではなかった。
しかしハーフタイムの控室で、面倒な奴らに捕まった。
「互角ってのは恥ずかしいんじゃねぇの?」
…うるさい!
「勝てるよね?円堂君に」
言われるまでもない!私が、私のチームがこんな奴らと同レベルなんてことあるものか!
それなのに、後半に入ってもなかなか勝利が見えてこないことが、更に焦りを呼んだ。自分でも情けないほどなり振り構っていなかった。
「勝つのは我々、ダイヤモンドダストだ!」
それに応えるように、チームもよく動いてくれた。
でも――勝てなかった。
他ならぬこの私が決められなくて。
「次こそ絶対、君達を倒す…!!」
悔しい。ただ純粋に悔しかった。先にペースを乱されたことも、柄にもなく焦らされたことも、最後決めきれなかったことも、何もかも。
このまま終わりになどさせない。次は必ず…!
思えば、こんなに情けないほど悔しい思いを味わったのはいつぶりだろう?このところ感情が無駄に動くことなどなくなっていたのに。それが私の強みだったし、チームにも浸透しているはずだ。あの暑苦しいあいつのプロミネンスとも、勝手にジェネシスを名乗っている寄せ集めチームのガイアとも違う、私の誇りのダイ
ヤモンドダスト。なのに、よりによって私が苛ついていたのでは本末転倒じゃないか。
『このユニホームを着れば気持ちは一つ!』
『互角ってのは恥ずかしいんじゃねぇの?』
この心の動きは何なのだ。
…制御しなくては、これも。今までも、何とかしてきたのだから。
「全く、情けない野郎だ。自分から喧嘩売っといて引き分けとはなぁ?」
うるさいな。
「同点は敗北と同じ、だっけ?…ということは、今のお前は」
黙れ。
「私は負けたわけではない!」
この前から、何だか知らないがやたらにつっかかってくるな、こいつは。
「彼らのスペックは十分に把握した。勝利は確実だ」
相手にしてまたあの試合の時みたいに失態を演じるのも御免だ。放っておこう、そう思った時。
「残念だけど、そのデータは無駄になった」
「―――!!」
いきなりの死の宣告。
「ダイヤモンドダストに次はねぇってことだろ。終わりなんだよ」
「残念だよ、ガゼル」
好き放題言っている奴らの声が遠のく。私の大好きなはずの凍てつく闇が、今は私の心の真ん中に突き刺さってくる――――。
(あの方は…選択を誤った!!)
良くも悪くも、私の心はすぐに冷える。闇の氷を胸に抱えたまま一人になって、しばらくすると徐々に理性が戻ってきた。
あの方のためにジェネシスを目指す。その心は誰よりも強い自信はあるし、今だって決して揺らがない。そのために作り上げてきたチーム。私の誇りのダイヤモンドダスト。
けれど―――言い返せなかった。
『ただの人間に勝てないチームに、ジェネシスの称号なんざ要らねぇだろ』
あいつの声がまた響く。
勝てなかった。結果でしか示せないこの争いの中で、それは紛れもない事実で、重く重くのしかかる。この結果を見られれば、あの方の決断に歯向かうだけの資格は、確かにないのだ。
(何かが…足りないんだろうか)
この思いを、確かな結果に表すための何かが。
『このユニホームを着れば気持ちは一つ!』
(…またか)
あの時の円堂守の言葉。何故こんなに思い出されるんだ?チームの気持ちなら、私たちだって一つにしてきたはず。
「……」
足りないとするなら、一体何だというのだ。
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