fire blizzard
-fire 1-
「よろしくな、南雲!」
円堂が疑いもせず笑って言った、その時には別に何も感じなかった。面白そうな奴、だけどバカな奴。安直に他人を信じ過ぎなんじゃね?結局グランに邪魔されて入り込むのは失敗したが、その時はそれだけだった。
引っ掛かり始めたのはダイヤモンドダストが雷門に喧嘩売ったあの試合からだ。
(なんであいつ全然ノーザンインパクト打たねぇんだよ)
最初のうち遊んでるような試合運びばかりするあいつに、何だかもどかしく思うような気分が湧く。――何でだ?思ってから自問した。あいつが遊んでるうちにうっかり負けてでもくれた方が、敵が減ってラクになるんじゃねぇの?
アフロディが来てゴッドノウズが決まった。
「このユニホームを着れば気持ちは一つ!」
「…」
何だ?何か引っ掛かる。
そうか、マスターランクのくせにあいつが先に失点なんかしやがるからか。
「何やってんだよ、先に失点とかあり得ねぇだろ」
その思いをそのまんま口に出すと、
「でも、ガゼルは感じ取ったみたいだよ」
とグランが言う。
「何を」
「円堂君の力をさ」
「…」
それなのか?この良く分からない違和感も?
だーっ、分かんねぇ。
「何だよ、アンタはいつももったいぶり過ぎだぜ!」
とりあえずグランのせいにしとく。実際こいつがもったいつけ過ぎで気に食わねぇのは事実だしな!
そしたらその直後からあいつもようやく本気になったっぽい。ダイヤモンドダストお得意の速攻カウンターであいつにボールが繋がった。
「ノーザンインパクト!」
あぁやっと打ちやがった。
「正義の鉄拳!」
対する円堂の方も見たことない新技だったが、拮抗状態はすぐに破れてあいつのシュートが勝った。
(だよな)
そう思って、また疑問。今、俺なんで満足したし。あぁやっぱ何かモヤモヤするぜ。何なんだこれ。
ちょうど前半が終了した。まぁいいや、このモヤモヤ、全部あいつにぶつけてやれ。
ぶつけ過ぎたか、後半入ってからあいつはだいぶテンパってた。今まで見た中で多分一番テンパってたと思う。せっかく勝ち越してもすぐ追い付かれるし、その後チャンスはあんのになかなか決まんないし、何よりあいつのあの顔。
(おいおい…どうしちまったんだよ)
もう自分の考えを疑問に思う暇もなく、俺は手に汗握っていた。まさか負けんじゃねぇだろうな?
円堂が二度も上がる。相手も必死だ、あんな危ない真似までして。俺ならあの隙見逃さねぇけど、と思ったら、ダイヤモンドダストにもちゃんと誰か(クララとアイシーだっけ?)カットした奴がいた。
「……」
多分、あいつもあれだけテンパっちゃいるけど、あの隙につけ入るのを狙ってるだろう。言わなくてもその通りにちゃんと動く奴がチームにいるってのは、こうして見てると心強いもんなんだなってことがよく分かる。
それはダイヤモンドダストの奴らがあいつを慕ってるから。あいつのために考えて、動いて、勝とうとしてるから。
『私は負けない…ダイヤモンドダストの名にかけて!』
そして、あいつも。口にも顔にも出さないが、あいつの方も自分のチームが、チームメイトがベタベタに好きなんだ。
(もちろん俺のプロミネンスだって負けちゃいねぇんだけど…)
何となく、根拠なんかもう全然ないけど、そこら辺にこのモヤモヤの答えがあるような気がした。
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